11月7日に発売となった話題作、『Cling To Blindness 目隠し必須ホラー』。 ゲーム制作者であるLizardryさんにお越しいただきました!
モニターに映る「ビジュアル」が一切無い状態でゴールを目指すという、異色のゲーム。
まさに「音」だけが頼りになる本作について、今回はサウンド制作を担当した株式会社ジーアングルの倉田を交えて対談させていただきました。
音だけで表現するうえでのこだわりや「足音さん」のサウンド制作秘話など、本作誕生の裏側に迫ります。ぜひご覧ください!
プロフィール

Lizardry(リザードリィ)
個人開発のゲームクリエイター。
代表作は、『7 Days to End with You』『Refind Self』。本作『Cling to Blindness』。

倉田 涼(くらた りょう)
歌曲・BGM・効果音制作からMA、ゲームエンジンへの実装までサウンド業務全般を担当。
バンド出身ながらアイドルやアニソン系まで幅広いジャンルに対応可能で、ジーアングルにてサウンドディレクター・コンポーザーとして活動中。
詳細リンク:https://sound.g-angle.co.jp/creator-director/ryo-kurata

ビジュアルなしの挑戦。ホラーなのに「ジャンプスケア」を排除した理由
ーービジュアルがないという斬新な企画ですが、今作の制作に至った経緯を伺えますでしょうか?
Lizardryさん前回の『Refind Self: 性格診断ゲーム※1』を制作中に
「音だけのゲームを作りたい、それがホラーゲームだと相性いいだろうな」
という構想はあったんです。



ただ、前作リリース後には他の企画のことを考えていたせいで、すっかり忘れていて(笑)
今年に入ってから思い出して、プロトタイプを作ってみたらいけそうだったので、本格的に制作を始めました。



『音だけのゲーム』はありますが、『音だけのホラーゲーム』は見たことがなかったので、リリースしてみたいなと思ったんです。


ーー今年! 制作期間としては思ったより短いんですね。



期間自体はそうですね。
実は他にもいくつか企画していたので、本作はプロトタイプを作って、止めて…をずっと繰り返していました。



僕はリリースまで持っていくかに関して、プロトタイプが出来てから判断しているんですが、その際自分だけでなく、周りの方にもプレイしてもらって意見を聞くようにしています。



特に「普段ゲームをしない方でも楽しめるか」は重要視していて、
なるべく携帯でプレイできるようにしているのも、この点を意識していますね。(今作はSteamのみ)
ーーなるほど! 前作も前々作も、がっつりゲーマーではない人でも、操作は簡単だけどストーリーに引き込まれる…というところで幅広い方にプレイされたのだと思います。今回「ジャンプスケア※2はありません」と事前に公開されているのも、プレイヤーさんの間口を広げる意味もありましたか?
※2 ジャンプスケア:ホラー作品等で突然大きな音や映像変化で観客やプレイヤーを驚かせる演出のこと



そうですね。まず僕がホラーゲームが苦手なんです(笑)
そしてサウンドだけで表現するとなると、大きな音が出ると不快感の方が強いだろうなというのもあり、ジャンプスケアは採用しませんでした。



プレイヤーさんからも意見が二極化していて、「全く怖くなかった」という人と、「怖くてダメだった」という意見のどちらもありました。
通常のゲームと違ってビジュアルがないので、感想がさらにプレイヤーさんそれぞれの感性に寄るのは面白いですね。
ーービジュアルがないことで制作の苦労も多かったと思います。



絵の用意が必要なかったので、プロト制作は早かったです。
ただ、最初に準備するものは少なかったものの、実際に制作を進めるとなると、通常のステップでゲームを作るより大変なことの方が多かったですね。



ゲームの案内や設定しかり、通常搭載されているものがないので、難易度も高かったと思います。なんだかんだ、減った作業より増えた作業が多かった。
シナリオを書きながら「このままじゃ音だけで表現できないかも…?」と気が付くことが多くて、作りながら大変さに気がつきました。



ほかにも、初めて声優さんに演技をしていただくということで、会話でどこまで表現できるか、わざとらしい解説にならないように気をつけました。
最後は声優さんの演技力に何とかしていただいたと思っています!本当に感謝しております。


「足音」を作るために、自分の体を叩き続けた
ーー今回初の声優さん起用(伊瀬茉莉也さん、三石琴乃さん)とのことで、Lizardryさんから希望を出されたのですか?



自分でも考えつつ、ジーアングルさんにキャラクター感をご相談して、ご提案をいただいて決めていきました。



ビジュアルがない中でどれだけ表現していただけるかを重視しましたが、本当に素敵な演技でした。
キャラクターデザインもなかったため、収録をしながら「お2人にキャラを作っていただいた」といっても過言ではないですね。


ーー登場キャラクターはあえて性別を限定されていませんでしたよね。



はい。出来るだけ曖昧にしようという意図がありました。
プレイヤーさんが感じ取った性別・姿が正解といいますか…想像しないといけないゲームなので、そこも楽しんでほしいですね。
ーー音楽面のお話も聞かせてください。



前作に引き続き、今回も制作を担当させていただきました。
特に今回は「足音さん」の音が紆余曲折あったなあと…かなりリテイクをいただきましたね(笑)



たくさん戻しちゃいましたよね(笑)



一旦完成してから方向性が変わる大逆転もありつつ(笑)
最終的にシンプルなオーダーになりましたが、普通の足音を録っても案外いい音にならなかったんですよね。



ゾンビみたいなわざとらしい足音や、アタックが強すぎるのも良くないという話もあり、これは普通の作り方ではダメだなと。
より不気味さを出すため、いろんなところをぺちぺちしながら、自分の体も使っていい音がないか試行錯誤しました。









足だとなかなか表現が難しく、最終的に手や腕を鳴らして加工したものがOKになりましたね。
ただこれを聞いたユーザーさんに「足の音じゃないんかい!」ってがっかりされないか心配してます(笑)



初めて聞いたお話でした!こだわって作ってくださったんですね。



プレイヤーさんにとって「自分の足音」は自分の居場所を知るための音である一方、
「足音さんの足音」は恐怖や本作のシンボル的な存在にならないといけない。同じ「足音」でも役割・目的が違っていて。



だいぶ戻しちゃったなと自分でも思うんですけど、この違いを表現するために、何度もやり取りさせていただきました。
逆に、風鈴の音はとてもスムーズでしたね。



恐れ入ります。制作しているうちに自分の中でも世界観が定まってきたので、そこからはスムーズだった印象があります。
ーー今回弊社で制作させていただいたものと、素材を利用されている箇所もあったと思います。



基本はプロトの時点でライブラリー素材を全て組み込んでいるので、組んだうえで「これは制作した方がクオリティーが上がるな」というものをお願いした形になります。



たとえば壁の音でいうと、最初は制作いただいたのですが最終的に素材を使用していたり、テストプレイを重ねてみて、ゲーム設計の都合上素材に変えたものもあります。
「感動」ではなく「反骨精神」を。こだわりのエンディング
ーーBGMに関してはいかがでしたでしょうか?



特にエンディングのBGMは、足音さんの足音なみにやりとりさせていただきましたよね。
意外なジャンルのオーダーだったのですが、意図はあったのでしょうか?



今までのような、綺麗な感動みたいな方向に落としたくなかったんですよね。
「綺麗な感動」の方向性も考えてはいたのですが、そうすると今までのことが全て否定されるというか、主人公が報われないなと。
反骨精神みたいなのを表現したかったですね。





あと、あのままアンビエントで終わると、目隠ししたままではゲームが終わったかわからないと思うので。



僕としては得意なジャンルではありました!
結果としてものすごいラリーにはなってしまったんですが(笑)
最初は具体的なフィードバックもいただいてましたが、途中から「もっとカッコよく!」みたいなやり取りになっていって。



サビ無し予定でしたが、途中からサビも追加されたり(笑)



元々90秒尺予定でしたが、結果3分近くになりましたね(笑)



でも最終的にめっちゃカッコよくしていただきました!



嬉しいです!
実はこちらもベースソロで核となるスラップサウンドを出すため、ギターをギャンギャンに鳴らすのではなく、いろんなところをぺちぺちしながらさらにカッコいい音がないか試行錯誤しました。



本当に、体を使っていろんな音を試してくださってたんですねぇ。



ええ。
フィードバックをいただくたびに、Lizardryさんの熱量を感じてましたからね。応えないとと必死でしたよ!
企画からデバッグまで。「窓口ひとつ」で完結するパートナーシップ
ーー前作の『Refind Self: 性格診断ゲーム』も制作させていただきましたが、なぜ今回も弊社にお任せいただけることになったのでしょうか?



お任せしやすいというのが一番ですね!
『Refind Self』の時もいいものを作っていただきましたし、信頼関係があってご相談しやすいというのもあります。
次もご相談させていただくならジーアングルさんだなと思いました。



また、今回はBGMだけでなく効果音や声優さんのキャスティングも必要だったので、その窓口がひとつというのは僕としてもかなりやりやすい点でしたね。
それぞれの制作状況が常にわかるので、みんなで同じイメージを持って完成に向かえますし、
自分が情報のキャッチボールをやらなくて済んだことで制作のコストが軽くなりました。





最終的には「ゲームの開発やデバッグを普段されていない方にテストプレイをしていただきたい」とオーダーしたところ、座組を組んでやっていただきました。



ありがとうございます!
こちらとしても、開発に関われるなら一部だけでなくどんどんお手伝いしたいと思っています。



小規模開発だとデバッグ会社さんに依頼して大規模に確認するのは難しい場合が多いと思いますし、そこまで大きい規模感ではなくテストプレイにご協力いただくのは、今後も需要がありそうですよね。



イベントに出展してユーザーさんの反応を見る方法もあるのですが、私はイベントにあまり出展しないのと、その手前の段階はいつも身内にお願いしているところなので。



それを聞いて、企画から絵からシナリオからプログラミング、テストプレイまでほぼすべて自分で出来ちゃうLizardryさんが作曲をされていなくてよかったなと思いました(笑)



興味はありますけどね(笑)



そこは手を出さずにとっといていただけると!(笑)
最後に


ーー読んでくれた皆さんへ一言お願いします!



日々たくさんの数のエンターテインメントが生まれている中、挑戦的なゲームを手に取って遊んでくださりありがとうございます!



話題に出た足音やエンディングだけではなくBGM・SEすべてこだわっていますので、ぜひサウンドにも注目して楽しんでください!
ホラーが苦手な方でもプレイできるよう、足音さんの足音が「ペンギンさん」になるモードもありますので、未プレイの方はぜひプレイしてみてくださいね!
ゲーム/開発元情報


- タイトル:Cling To Blindness 目隠し必須ホラー
- プレイ人数:1人
- 発売日:2025年11月7日
- 開発元:Lizardry
- ジャンル:ホラー / アドベンチャー
- 対応プラットフォーム:PC (Steam)
- 価格:690円(税込み)

