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レトロ回帰現象を考察|懐かしいのに新しい。Z世代がレトロに惹かれる理由とは

レトロ回帰現象(レトロブーム)を考察_サムネイル

こんにちは!幅広い制作領域を武器に「新たな驚きと感動を作る」制作会社ジーアングルブログ編集部です。

昨今、社会現象となったボンボンドロップシールをはじめ、主に30代以上の方々にとって「懐かしい」「レトロ」と感じるデザインや、キャラクターのコラボが増えていますよね。

ただ、ボンボンドロップシールやシール帳ブームの中心にいるのは、かつて子供だった大人たちだけではありません。
現代の若者──いわゆるZ世代や、小中学生といったさらに下の世代の子供たちも、この熱狂の中にいるのです。

高精細な映像やAIが当たり前になった今、なぜレトロなクリエイティブに注目が集まるのか。

この記事では、Z世代がレトロに惹かれる心理と、企業が取り入れられるクリエイティブ戦略のヒントを、編集部の独断と偏見も交えながら考察します。ぜひご覧ください。

この記事でわかること

  • レトロブームが起きている背景
  • 若年層がレトロに惹かれる3つの心理
  • レトロ感を取り入れた企業のマーケティング事例
  • BtoB企業・エンタメ以外の業種での活用シーン
  • 企業がレトロ要素を使うときの注意点

目次

なぜ”古い”が人気なのか?巻き起こるレトロ回帰現象

なぜ今、「懐かしさ」を感じさせるレトロな表現が人気なのか?
それは、現在の10〜20代の若者にとって、昭和や平成初期の文化は「かつて体験したもの」ではなく、新しく触れる文化だからです。

たとえば同じシール帳を見ても、30代以上の方は「昔これ集めてたなあ」と記憶がよみがえり、10〜20代は「何これかわいい!」と初めての出会いを楽しみます。

同じモノを前にしても、大人は「懐かしい」、若者は「新しい」と感じている。この感覚のズレこそが、今のレトロブームを読み解く鍵といえます。

海外旅行で古い街並みを歩くと、現地の人にとっては見慣れた日常でも、旅行者の目には新鮮に映りますよね。
若者にとってのレトロは、この「異文化体験」に近い感覚といえます。

生まれたときからスマホやSNSが当たり前だった世代にとって、ブラウン管の粗い映像やフィルム写真の色味、手で貼るシールの手触りは、日常では出会うことのない質感です。

この「懐かしい」と「新しい」が同時に成り立つことで、レトロは購買力のある大人とトレンドを生む若者、2つの世代に届く題材になっています。

ボンボンドロップシールについても、「平成女児」文化への関心が追い風となり、子どもから大人まで幅広い世代に名前が浸透したと報じられています。

なお、古いものが新しい世代に再発見される流れは、今に始まったことではありません。過去にも、大正時代のモダンな文化を再評価する「大正ロマン」ブームが起きています。

レトロ回帰は、時代を超えて繰り返されてきたトレンドのひとつなのです。

ボンボンドロップシールに見るアナログ熱狂

では、今の若者はどんなレトロに熱中しているのか。その象徴ともいえるのが、ボンボンドロップシールです。

ボンボンドロップシール(通称:ボンドロ)は、株式会社クーリアが2024年3月に発売した立体樹脂シールです。

名前のとおり、キャンディやしずくを思わせる、ぷっくりと盛り上がった立体感が持ち味です。

人気キャラクターとのコラボ商品が注目を集めたことで、一気に人気が広がりました。

出荷数は発売からおよそ約1年半で累計1,000万枚を突破し、2026年2月末時点では2,100万枚を上回ったと報じられています。
店頭に並べばすぐに売り切れるほどの人気で、フリマサイトでは定価の2倍を超える値段がつくことも珍しくない状況でした。

ジーアングル社内にも、休日に子どもと一緒に何店舗もはしごしたメンバーや、子どもためにオンラインストアを探し回ったメンバーがいます。

人気の中心は、シール帳に貼って見せ合ったり、友達と交換したりする遊び方です。

スマホ1台で何でも保存できる世代が、なぜ物理的なシールに熱中するのか。編集部では、次の3つの理由があると考えています。

  • 所有感:スクリーンショットと違い、手元に「モノ」として残る
  • 身体性:ぷっくりした感触や、貼る・並べるといった手の動きそのものが楽しい
  • コミュニケーション:交換を通じて、対面での会話が生まれる

デジタルで手に入るものが増えるほど、デジタルでは得られない体験の価値は高まっていく。ボンドロの熱狂は、まさにその証明といえます。

高精細な世界には無い想像力の余白

ピクセルアート(ドット絵)やフィルム風の加工が支持される理由のひとつは、あえて情報を間引くことで、見る側の想像力が働く余地を残している点にあります。

4K・8K映像、AI補正、SNSの加工フィルター。現代のビジュアルは隅々まで鮮明に描かれ、見る側が想像で補う部分がほとんど残っていません。

人の脳には、足りない情報を想像で補う「補完」の働きがあります。
たとえばドット絵のキャラクターは、表情も細部もわずかなドットでしか描かれていません。そのぶん見る側が表情や物語を補い、自分の感情や記憶を重ねやすくなります。

この「想像力の余白」が、高精細なデジタル表現にはない”エモさ”の正体といえるのです。

余白がエモさを生む仕組みについては、以下の記事でも詳しく解説しています。

▶関連記事:「エモい」を因数分解してみた

「昭和レトロ」「平成レトロ」「Y2K」って何?

現在のレトロブームは、どの時代の文化を楽しむかによって大きく3つに分けられます。
時期は重なる部分もあるため、目安として参考にしてください。

主な年代(目安)代表的なアイテム・文化
昭和レトロ1950年代〜1980年代クリームソーダ、純喫茶、フィルムカメラ、ブラウン管テレビ
平成レトロ1980年代後半〜2000年代初頭たまごっち、シール帳、プリクラ、ルーズソックス
Y2K2000年前後ローライズ、厚底シューズ、ガラケーのデコレーション

Y2Kは「Year 2000」の略で、2000年前後に流行したファッションやカルチャーを指します。平成レトロとY2Kは時期が近く、同じ意味で使われることもあります。

今の若年層がレトロに惹かれる心理構造

若年層がレトロに惹かれるのは、レトロが「安心できる心地よさ」「誰かと共有できる感情」「今の感覚に合った新しさ」の3つを同時に満たしてくれるからです。

ここでは、それぞれの心理を順に見ていきます。

“懐かしい”よりも”安心できる(チルい)”が評価されている

若年層がレトロに求めているのは、懐かしさではなく「落ち着ける心地よさ」です。

「チルい」とは、英語の「chill out(落ち着く、くつろぐ)」を語源とする言葉で、リラックスできる雰囲気や、のんびりとした空間を表すときに使われます。

今の若者は、SNSを開けば膨大な情報と、誰かの「完璧な日常」が絶えず流れてくる環境で暮らしています。
便利さと引き換えに、常に他人と比較できてしまい、最適な選択を求められる。そんな毎日に、どこか息苦しさを感じる若者も少なくないようです。

そこで心地よく映るのが、レトロの持つ「不完全さ」。

  • 純喫茶の少し薄暗い照明
  • フィルム写真の粗い粒子や、にじんだ色味
  • レコードから聞こえる、かすかなノイズ

どれも最新の技術から見れば不完全な要素ですが、その緩さが「完璧でなくていい」という安心感につながります。

レトロが持つ不完全さや緩さが、効率と完璧さを求められる日常からの”情緒的な逃げ場(チル)”として機能するのです。

「エモ消費」としてのレトロ

若者がレトロに価値を感じているのは、モノの機能ではなく、誰かと共有できる感情です。

純喫茶のクリームソーダを例に考えてみます。味だけで選ぶなら、ほかにも選択肢はたくさんあります。
それでも若者がわざわざ足を運ぶのは、鮮やかなメロンソーダの色や、華々しくはないが落ち着いた店内の雰囲気を写真に収め、SNSで共有する体験そのものに価値があるからです。

投稿を見た誰かが「エモい」と反応し、同じ感覚を持つ人とつながる。レトロは、こうした感情の共有を生みやすい題材です。

時代の空気をまとったレトロなモノには、それだけで「物語」を感じさせる力があります。

その物語が共感を呼び、共感が次の消費を生む。モノのスペックで差がつきにくい今、若者は機能ではなく、誰かと分かち合える「感情」を買っているのです。

昔そのままではなく”今の感覚”で選ばれる(ニュートロ)

若者が求めているのは、昔のモノをそのまま再現した「古さ」ではありません。今の感覚でアップデートされた「レトロ」です。

この流れを表す言葉に、2018年頃の韓国で広まった「ニュートロ(Newtro)」があります。
New(新しい)とRetro(レトロ)を掛け合わせた言葉で、「80〜90年代頃の要素を再編集し、最新のスタイルに落とし込む」ことを指します。(出典:文春オンライン)

韓国には、かつての流行を当時の姿のまま持ち出す「復古」という言葉もあり、ニュートロとは使い分けられています。

両者を分けるのは、現代のデザイン要素が加わっているかどうか。たとえば、企業が古くから使ってきたロゴを、今風のパッケージデザインに組み込むようなケースはニュートロに当たります。 

日本では、レトロとして扱われる対象が平成にまで広がってきました。
Z世代の若者が、「どこでもいっしょ」のトロやケロロ軍曹といった2000年代初期のキャラクターグッズを買い集める様子も紹介されています(出典:アドタイ)。 

再解釈のわかりやすい例が、バンダイのガシャポン「ブリスターチャームコレクション」ではないでしょうか。

ブリスターパックは本来、おもちゃを未開封のまま保存し、コレクションとして飾るための包装。クラシックなアメトイ(アメリカのおもちゃ)のコレクター文化を象徴する存在です。

このシリーズでは、ブリスターパックに入ったおもちゃの姿を、台紙や透明なカバーまで含めて手のひらに収まる4〜5cmほどに縮め、バッグに下げられるチャームにしています。
第1弾のマーベルを皮切りに、スター・ウォーズ、さらにはケロロ軍曹へと幅を広げてきました。

ここで再解釈されているのは、おもちゃそのものではありません。
「未開封のまま家で飾る」というコレクションの楽しみ方が、ラブブのヒットなどで広がったバッグチャームの流行と結びつき、「持ち歩いて人に見せる」楽しみ方へと置き換えられているのです。

昔の形を借りながら、楽しみ方は今のものに変えている。
昔の再現ではなく、今の感覚で再解釈されたレトロが選ばれる。ここに、ニュートロの本質があります。

レトロ感を取り入れたマーケティング例

レトロを取り入れて成果を上げている企業に共通するのは、昔をそのまま再現するのではなく、「当時の魅力」と「今の暮らしや楽しみ方」を掛け合わせている点です。

ここでは、レトロを取り入れる対象が異なる3つの事例をご紹介します。
キャラクター、商品デザイン、空間・体験。自社なら何に置き換えられるかを考えながら、読み進めてみてください。

サンエックス株式会社

サンエックスは、長年育ててきた自社キャラクターを、今の流行に合わせた商品に乗せて再び届けています。

同社は1932年に「チダ・ハンドラー」の社名で創業した老舗の文具メーカーです。

初めて自社でキャラクターを手がけたのは1979年。それから現在までに、リラックマやすみっコぐらし、たれぱんだを含め、生み出したキャラクターは1,000種類を超えています。

その資産を生かしているのが、「サンエックスユニバース」シリーズです。
2026年3月に登場した新商品では、「みかんぼうや」「まめゴマ」「モノクロブー」といった、2000年前後からのファンにはおなじみの顔ぶれが主役を務めています。

ラインナップの中心は、シール帳やタイルシール。前述のボンボンドロップシールの人気にそのまま重なるアイテムです。

ほかにも、デニム生地にチェーンを付けたポーチのように、懐かしさを感じる素材を取り入れつつ、日常で使いやすい形に整えたアイテムがラインアップされています。

当時のファンには懐かしく、今の若い世代には新鮮に映る。
長く大切に育ててきたキャラクターは、見せ方を変えるだけで何度でも”新作”として輝けることを、サンエックスは示しています。

石塚硝子株式会社「アデリアレトロ」

石塚硝子の「アデリアレトロ」は、当時のデザインを忠実に残しながら、使い勝手を現代の暮らしに合わせた食器シリーズです。

石塚硝子は1819年創業のガラスメーカーで、「アデリア」は1961年に誕生した同社の食器ブランドです。
草花や動物をモチーフにしたカラフルなグラスは、当時多くの家庭で日常的に使われていました。

生産終了から長い時を経て、このグラスに再び光が当たったきっかけはSNSでした。Instagramで昔のアデリアグラスを今も大切に使う人の投稿が、同社の若手デザイナーの目に留まったのです。
2018年に試験的に復刻モデルを出したところ想定以上の反響を呼び、「アデリアレトロ」としてシリーズ化されました。

シリーズ化の後も、同社はInstagramで集まるファンの反応を、新商品やイベントづくりに生かしてきました。
2018年の発売から2025年6月時点の約7年間で、累計出荷数が約165万個にのぼります。(出典:PR TIMES)

眠っていた過去のデザインと、若い世代の「かわいい」という反応。この2つを結びつけたことが大ヒットにつながっています。

西武園ゆうえんち

レトロブームと聞くと、西武園ゆうえんちを思い浮かべる方は多いのではないでしょうか。
西武園ゆうえんちは、昭和の世界観を空間ごと作り込み、訪れる人を物語の中へ招き入れる体験を打ち出しています。

1950年の開園から70年以上の歴史を持つ西武園ゆうえんち。ピークだった1988年度には年間でおよそ194万人が訪れていましたが、2019年度の来場者数は約37.8万人と、ピーク時の5分の1以下にまで落ち込んでいました。

転機となったのは、2021年5月19日のリニューアルオープンです。開業70周年を機に約100億円が投じられ、園内は「心あたたまる幸福感」をテーマに一新されました。
その中心に据えられたのが、1960年代の商店街をよみがえらせた「夕日の丘商店街」です。

建物や看板といった見た目の再現にとどまらず、商店街の”店主”たちが通りのあちこちでパフォーマンスを繰り広げ、当時のにぎわいそのものを体感できる仕掛けになっています。
来園者は見るだけでなく、昭和の住人とのやりとりに巻き込まれていきます。

長年の運営で積み重なった「古さ」を隠すのではなく、あえて前面に押し出す。この逆転の発想が、老舗遊園地を生まれ変わらせる原動力になりました。

BtoB企業・エンタメ以外の業種でもレトロは活かせる?

レトロは、BtoB企業やエンタメ以外の業種でも十分に活かせます。
長い歴史を持つ企業ほど、昔のロゴや製品、広告といった「レトロの素材」を、すでに社内に持っているからです。

冒頭で紹介した「大人は懐かしい、若者は新しい」という構図は、BtoBの現場にも当てはまります。

同じビジュアルでも、付き合いの長い取引先には懐かしく、これから出会う若い求職者には新鮮に映る可能性があります。

ここでは、業種を問わずレトロを取り入れやすい4つのシーンをご紹介します。

周年記念・社史コンテンツ

周年記念や社史のコンテンツでは、自社の歴史そのものが、ほかの企業には真似できないレトロの素材になり得ます。

創業当時のロゴ、昔の製品カタログ、工場や社屋の古い写真、かつての新聞広告。
社内の倉庫や資料室に眠っているこうした素材は、外から見れば、その会社にしかない時代の空気をまとっています。

活用の際に意識したいのが、前述のニュートロの考え方です。
昔の素材をそのまま並べるのではなく、今のデザインと掛け合わせて再構成します。たとえば、次のような使い方が考えられます。

  • 創業時のロゴをモチーフにした周年記念ロゴ
  • 昔の製品カタログの絵柄を生かしたノベルティや記念グッズ
  • 社屋の古い写真をもとに、当時の風景をイラストやアニメーションで描き起こした周年ムービー

長く事業を続けてきた企業にとって、積み重ねてきた歴史は、お金をかけても新しく作ることのできない、唯一無二の財産です。

周年記念の映像をアニメーションで制作する場合の考え方については、以下の記事も参考にしてみてください。

▶関連記事:フルアニメとリミテッドアニメの違いは?メリット・デメリット、活用成功事例を解説

採用ブランディング

採用ブランディングでは、レトロな表現が、若い求職者に「なんだか面白そうな会社」と感じてもらうための入り口になります。

採用サイトや求人広告は、どうしても似たような構成やビジュアルになりがちです。
並んで比べられる中で、まず目に留まらなければ、どれだけ魅力的な仕事内容も読んでもらえません。

そこで、若い世代にとって新鮮に映るレトロ表現を取り入れると、ほかの企業との違いを一目で示せます。

  • 昭和の映画ポスター風に仕上げた求人ビジュアル
  • ドット絵のレトロゲーム風に、仕事の流れや入社後のステップを表現した採用サイト
  • 昔の社内報のような誌面デザインで、社員の素顔を紹介する会社案内

堅いイメージを持たれやすい業界ほど、こうした遊び心のある表現とのギャップが印象に残ります。
求人票の文字だけでは伝えきれない社風を、ひと目で伝えられる点が、レトロ表現を採用に取り入れる強みです。

展示会・ノベルティ

展示会のノベルティでは、「触れる・集める・交換する」という体験を取り入れると、手に取ってもらいやすく、記憶にも残りやすくなります。

先ほどのボンボンドロップシールの例では、人気の背景として所有感・身体性・コミュニケーションの3つを挙げました。
この3つは、企業が配るノベルティにもそのまま応用できます。

  • 所有感:自社製品をレトロなタッチで描いたシールや缶バッジなど、手元に残しておきたくなるデザインにする
  • 身体性:ぷっくりした質感のシールや、自社製品のミニチュアを封入したブリスター風チャームなど、触って楽しい素材を選ぶ
  • コミュニケーション:複数の絵柄を用意して「集める・交換する」楽しみを持たせ、持ち帰ったあと社内での会話のきっかけにする

展示会では、ノベルティがブースに立ち寄るきっかけにもなります。ただ、本当に大切なのは、配ったあとです。

持ち帰ったノベルティが、デスクやパソコン、手帳に貼られたまま残り続ける。その時間の長さが、企業名を思い出してもらえる回数を左右します。

自社キャラクター・SNS発信

ドット絵や昭和アニメ風のタッチなど、レトロ調で描いた自社キャラクターは、企業名を覚えてもらうための窓口になります。

2026年8月、サンエックスは創業以来初めてとなるテレビCMを放映しました。

リラックマやすみっコぐらしなど、新旧のキャラクターが登場するCMで、視聴者からは、おなじみのキャラクターがサンエックス生まれだと知って驚く声も寄せられたといいます。

同社がCMに踏み切った背景には、キャラクターの人気に比べ、それを生み出した会社の名前が十分に知られていないという課題がありました。

キャラクターは、名前や社名よりも先に、見た目で覚えてもらえる存在です。
だからこそ、企業名とセットで覚えてもらえるように、最初から設計しておくことが欠かせません。

その手段のひとつが、レトロ調のデザインです。
前述の「想像力の余白」を持つドット絵や、昭和アニメのような温かみのあるタッチは、高精細な画像があふれるSNSのタイムラインの中で、ほかとは違う質感として目に留まるきっかけになり得ます。

社名より先に、まず顔を覚えてもらう。その入り口として、レトロ調の自社キャラクターは強力な武器になり得ます。

自社キャラクターの作り方や運用の進め方については、以下の記事で詳しく解説しています。

▶関連記事:キャラクターマーケティングとは?成功例やメリット・デメリットを解説
▶関連記事:キャラクターマーケティングをスモールスタート!流れを解説

企業がレトロ要素を使うときの注意点

レトロを取り入れるときに押さえておきたいのは、「レトロはあくまで手段であり、目的ではない」という点です。

昔らしさ・懐かしさを出すこと自体が目的になってしまうと、若い世代にも、自社のブランドにも響かない施策になりかねません。

ここでは、企業がレトロ要素を使うときにつまずきやすい5つのポイントと、その避け方をご紹介します。

時代考証の正確さより感情設計

若い世代に向けてレトロを取り入れるなら、細部の正確さよりも、ターゲットが心地よさや空気感を感じられるかどうかが最重要です。

当時をよく知る世代に向けた企画であれば、時代背景や小道具の正確さは欠かせません。「この時代にこれはなかった」という違和感が、そのまま信頼の低下につながるからです。

一方で、Z世代にとってのレトロは「未体験の新しいカルチャー」です。

彼らが反応しているのは、「過去を正確に再現しているか」ではなく、色味のやわらかさや、フォントや照明がつくる落ち着いた雰囲気といった、感覚的な部分です。

もちろん、時代考証を無視してよいわけではありません。

大切なのは優先順位で、まず「どんな気持ちになってほしいか」を決め、その感情を伝えるのに必要な範囲でその時あった要素を選ぶ。この順番で考えると、表現にブレが生まれにくくなります。

ただの懐古主義にしない

レトロを発信するときは、「昔はよかった」と教える姿勢ではなく、若い世代と一緒に楽しむ姿勢も大切です。

「昔はこれが当たり前だった」「この良さがわかるかな」といった語り口は、送り手にとっては思い出話でも、受け手の若い世代には押し付けや説教のように聞こえてしまうことがあります。

若い世代はレトロを、自分なりの感性で「かわいい」「エモい」と発見し、楽しんでいます。発見の主導権は、受け手の側にあるのです。

たとえばSNSでの発信なら、当時の解説を並べるよりも、「この色の組み合わせ、今見ると/今見てもかわいくないですか?」と問いかけるほうが、若い世代が自分の感想を返しやすくなります。

当時の価値観や表現をそのまま持ち込まない

レトロを取り入れるときは、見た目と一緒に価値観まで持ち込まないよう注意が必要です。

数十年前の広告やドラマなど、当時は当たり前だった表現が、今の基準では不適切と受け取られることがあります。

  • 「家事は女性、仕事は男性」といった性別による役割分担を前提にした描写
  • 容姿や体型をからかうような演出
  • 特定の職業や立場の人を、型にはめて描くステレオタイプ

近年は、古い男性像・女性像を描いた広告がSNSで批判を集め、企業が取り下げや謝罪に追い込まれる「ジェンダー炎上」も繰り返し話題になっています。
レトロな世界観の中であっても、見る人が今の価値観で受け取ることに変わりはありません。

このような炎上を避けるためには、レトロ表現を取り入れる際はより一層、企画や制作の段階から現在の倫理観・ジェンダー観に即しているかチェックする体制を整えておくことが大切です。

借りるのは、色や質感、フォントといった見た目の”レトロ”だけ。価値観まで昔に戻す必要はありません。

レトロは主役ではなくスパイス

レトロ施策の主役は、あくまで自社の商品やブランドです。レトロは、その魅力を引き立てる味付けとして取り入れるのがベスト。

レトロ感を出すことに力を入れすぎると、自社ブランドの個性が埋もれてしまうことがあります。
これまでブランドを支えてきた既存の顧客に「らしくない」と受け取られ、離れてしまう可能性もゼロではありません。

たとえば、ロゴやコーポレートカラーといったブランドの軸は変えずに、パッケージの柄やフォント、キャンペーンのビジュアルにだけレトロの要素を加える。
こうした線引きをしておくと、自社らしさを保ったままレトロさを打ち出せます。

料理のスパイスと同じで、入れすぎれば素材そのものの味を消してしまいます。レトロを足すほど自社らしさが薄れていくなら、それは入れすぎのサインです。

今の画面サイズやSNSでの見え方を意識する

どれだけ魅力的なレトロの世界観も、スマホの画面やSNSのタイムライン等、現在の視聴環境で伝わらなければ、見てもらうことはできません。

今の若い世代がコンテンツに出会うのは、多くの場合スマホの画面の中です。
レトロな表現を設計するときも、実際にどの画面で、どんな大きさで見られるかを前提に考える必要があります。

  • 縦型の画角に収まるか:横長のポスターや映像をそのまま使うと、縦型の画面では要素が小さくなり、魅力が伝わりにくくなります。
  • サムネイルでくすまないか:フィルム風の淡い色味や粗い粒子は、一覧画面の小さなサムネイルになると、ぼやけた印象に見えてしまうことがあります。
  • 最初の数秒で世界観が伝わるか:スクロールの中で見てもらうには、冒頭で「何だろう」と思わせる工夫が欠かせません。

縦型ショート動画で興味を引くための考え方については、以下の記事で詳しく解説しています。

▶関連記事:縦型ショート動画とは?流行の理由とメリット・デメリット、活用事例まで紹介

レトロの魅力を、今の画面サイズや視聴環境に合わせて”翻訳”する。これもまた、レトロ感を最大限活かす、再解釈のひとつです。

感情を揺さぶるクリエイティブのご相談はジーアングルまで

レトロな表現で若い世代の心を動かすには、「昔っぽく見せる技術」だけでなく、今の世代が何を心地よいと感じるかを読み解く視点が欠かせません。

ジーアングルは、20年以上にわたりゲーム・エンタメ業界で若年層へ向けたクリエイティブ制作に携わってきました。

制作だけでなく、企画の段階から、PR・ブランディングまで一貫してサポートできるのもジーアングルの特長です。
こんなお悩みをお持ちの方は、ぜひご相談ください。

感情を揺さぶるクリエイティブに関するお悩み

  • レトロを取り入れたいが、自社のブランドに合う表現がわからない
  • 若い世代に向けた発信で、他社と差のつく切り口を探している
  • 社内に眠っている昔のロゴや資料を、何かに生かせないか考えている
  • 一度きりの施策で終わらせず、長く使えるクリエイティブを作りたい

「まだ企画が固まっていない」「何から相談すればいいかわからない」という段階でも大丈夫です。

お話を伺いながら、どんな表現が合うのかを一緒に考えます。

レトロ回帰現象についてのQ&A

ここでは、レトロ回帰現象(レトロブーム)や、企業がレトロを取り入れる際の疑問にお答えします。

A. 終わる時期を断定することはできませんが、古いものが新しい世代に再発見される流れは繰り返されてきたもので、対象となる年代を変えながら続いていくと考えられます。

記事の冒頭でも触れたように、過去にも大正時代の文化を再評価する「大正ロマン」のブームがありました。

そして今は、昭和だけでなく、平成の文化までもがレトロとして楽しまれています。

ひとつのブームとして見れば流行り廃りはありますが、「ある世代にとっての日常が、次の世代にとっての新鮮なカルチャーになる」という構造そのものは、時代が進む限りなくなりません。

数年後には、今の10〜20代が慣れ親しんでいる文化が、次の世代のレトロとして注目されている可能性もあります。

A. 届けたい相手の世代と、自社の歴史に合った年代を選ぶのが基本です。

まず考えたいのは、誰に届けたいかです。10代や20代前半の若い世代に「新しさ」を感じてもらいたいなら、彼らがまったく体験していない昭和レトロは、異文化体験のような新鮮さを生みやすい題材です。

一方、20代後半から30代にかけては、子どものころに親しんだ平成のキャラクターやグッズに、懐かしさと新しさの両方を感じる人も少なくありません。

次に、自社の歴史との相性です。創業した年代や、代表的な商品がヒットした時代と重なる年代を選べば、レトロな表現に「この会社だからこそ」という必然性が生まれます。

A. 取り入れる範囲を絞れば、小さな予算からでも始められます。

いきなりブランド全体をレトロに変える必要はありません。たとえば、次のような小さな取り組みから試してみる方法があります。

  • 展示会で配るシールや缶バッジを、1種類だけレトロなデザインにする
  • SNSのアイコンや投稿用のイラストを、ドット絵や昭和風のタッチで作る
  • 既存の自社キャラクターに、期間限定でレトロ調のデザインを用意する

まず小さく出してみて、取引先や求職者、SNSでの反応を確かめながら、手応えのあった方向に広げていくと、予算を無駄にしにくくなります。

キャラクターを使った施策を小さく始める流れや費用の目安については、以下の記事も参考にしてみてください。

▶関連記事:キャラクターマーケティングをスモールスタート!流れを解説

A. 自社の素材であっても権利の持ち主を確認する必要があり、他社の昔の作品に似せることは避けるべきです。

ロゴやイラストの著作権は、作られた時点で自動的に、それを描いた人に生まれます。
そのため、昔のロゴやキャラクターを外部のデザイナーに依頼して作っていた場合、当時の契約で権利が自社に移っていない可能性もあります。

また、権利を譲り受けていたとしても、デザインを変えることについてデザイナーの同意が必要になるケースもあります。(参考:ロゴデザインの著作権譲渡|商標登録前に確認すべき条件)

リメイクを検討する際は、まず当時の契約書や発注記録を確認し、誰が権利を持っているか、どこまで手を加えてよいかを整理しておきましょう。

他社の昔のロゴやキャラクターについては、著作権だけでなく、商標権などで保護されていることもあります。(参考:刺繍やイラストで企業ロゴ入り品を作る依頼|商標権者の許諾確認 2026)

「昔のものだから」「レトロ風だから」という理由で、他社の作品に似せたデザインを作るのはNGです。
権利の判断に迷う場合は、弁理士や弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

まとめ

Z世代を中心とした若い世代がレトロに惹かれるのは、昭和や平成初期の文化が、彼らにとって懐かしいものではなく、初めて触れる新しいカルチャーだからです。

すべてが効率化され、何でも鮮明に見えるデジタル社会だからこそ、レトロの持つ不完全さや手触り、誰かと分かち合える温かさが、新しい価値として受け止められています。
レトロ回帰とは、言い換えれば、デジタルの時代に人が「人らしい心地よさ」を取り戻そうとする動きなのかもしれません。

ジーアングルでは、ゲーム・エンタメ業界で長年培ってきた制作経験をもとに、ドット絵やレトロ調のイラスト、アニメーションなど、若い世代の感性に届くクリエイティブをご提案しています。

「何から始めればいいかわからない」という段階でも、お気軽にご相談ください。