こんにちは!幅広い制作領域を武器に「新たな驚きと感動を作る」制作会社ジーアングル ブログ編集部です。
近年、急速な発展を遂げ、個人・法人を問わず様々な方法で活用されるAI。
中でもAIイラストやAI音声といったクリエイティブ方面でのAI活用は、コスト削減や施策効率化など、企業においても非常に注目されています。
そこで気になるのがAI生成物の『著作権』。
権利周りの扱いがシビアなクリエイティブ領域のAI生成物は、知らずにパクりになっていないか?学習元もクリアか?など、便利な一方、扱いが難しい面もあります。
今回は、そんなイラスト・音声・動画・音楽といったAI生成物について、ビジネスに活かす際の著作権に関する注意点、メリット・デメリットを解説します。
AI生成物をビジネスで活用するメリット

イラストや音声といったAI生成物をビジネスで活用する際、次のようなメリットがあります。
- 制作コストの削減
- 制作スピード迅速化
- 大量パターン生成によるPDCA試行回数アップ など
イラスト・音声・動画・音楽などのクリエイティブ領域は専門的な知識がないと作成が難しいことも多く、社内に専門チームがない場合、外部への発注が必要な場合も多いと思います。
そこでAIを利用すれば、単純な発注コストの削減や制作スピードの短縮(生成時間は数秒〜数分程度)が叶うため、やはりここが最大のメリットといえます。
加えて、制作スピードアップによりPDCAの試行回数を増やすことができたり、時事ネタへの対応がしやすくなるなど、施策の効率化も期待できます。
また、声優・ナレーターの音声には俳優やタレント起用と同じように使用期間があり、原則買取はできないため、AI音声を使うことでこれらの制限を解消できる可能性があります。
AI生成物をビジネスで活用するデメリット・注意点

一方で、AI生成物を使う時は次のようなデメリットに注意しなければなりません。
- 著作権侵害リスク
- 学習元データの不透明性による『知らない間の権利侵害』
- 「AIを使っている」ということによる企業ブランドイメージ低下 など
AI生成物の利用でもっとも注意が必要なのは、やはり著作権に関わる内容です。
AIが学習NGな著作物を学習している場合、知らない間に権利を侵害するリスクがあります。
また、昨今のAIによる類似・パクリ問題には世間も敏感です。
SNSを中心に自身が被害を受けたとの発信も多く、AI生成物自体へ忌避感を持つユーザーも少なくありません。
疑惑が持ち上がった段階で、内容の是非を問わず炎上するケースも。
残念ながら「公式コンテンツにAI生成物を使っている」こと自体が企業や商品のイメージダウンに繋がってしまったり、信頼性を損なう可能性は把握しておくべきでしょう。
AI生成物に著作権は発生する?

ここでは、AI生成物に著作権が発生するシチュエーションや、AI生成物が著作権侵害にあたる条件を解説します。
AIが完全に自動生成した場合
AIが「人間の指示を介さず」に生成したコンテンツには、原則として著作権が発生しません。
著作物として認定されるのは「思想又は感情を創作的に表現したもの」と定義されています。
これは人間による表現を前提としたものと解釈でき、法律上、機械は人に該当しないことから著作権が発生しないのです。
人間の「創作意図・創作的寄与」がある場合
人間の創作意図や創作的寄与があると判断された場合、AI生成物に著作権が発生する可能性があります。
人間によるアイデアや意図が反映されており、なおかつ生成結果に大幅な加工・修正を行った場合は、創作意図と創作的寄与の両方が認められる可能性が高いです。
AI生成物が著作権侵害に該当する条件
著作権保有者の許可を得ずに具体的な著作物に似せてAIで生成する、生成したものを売却して収益を得る、配信を行うなどは明確に著作権侵害に該当します。
著作権侵害は「類似性」「依拠性」の両方が満たされた場合に限定されます。
- 類似性…既存の著作物と同一または類似した状態
- 依拠性…著作物を参考にしてコピーや二次創作を行った状態
上記を元に考えると、「たまたま似てしまった」ケースは、類似性への該当のみで著作権違反に該当しないと考えられますが、この「たまたま似てしまった=意識的に似せたわけではない」ことを証明するのは非常に困難です。
つまり、「生成物が既存著作物に似すぎてしまった場合」も侵害になる可能性があるのです。
個人利用・法人利用どちらにもいえることですが、AIの学習データに学習NGデータが含まれていないか確認する、プロンプトに特定の著作物の名前を入れないようにするなど、「たまたま似てしまう」事案を回避しなければなりません。
AIと著作権を巡る最新状況(2025年11月時点)
文化庁によると、「文化芸術活動に関する法律相談窓口」には、AI生成物に関する相談が多数寄せられています。
令和6年度の「AIと著作権に関する相談件数」は89件。これは全体の相談件数322件のうち、約28%を占める件数です。
日本国内では「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」が2025年9月より全面施行され、今後は人工知能基本計画及び指針が策定されます。
2025年11月現在、文化庁が「著作権侵害にあたる」との見解を示すケースは次のとおりです。
- 生成物に既存の著作物との類似性及び依拠性が認められる
- AIへの「過学習」を意図的に行っている
- 著作権者の許諾なく、著作物を海賊版サイトに掲載する
【補足】そもそも「著作権」とは?
著作権とは、著作者が有する著作物の権利のことを指します。
著作物として認められるものは、小説などの文芸や美術、音楽など多岐にわたり、第三者が著作物をコピー・販売・配信・二次創作などを行う場合は、著作権者の承諾を受けなければなりません。
なお、著作権が認められる期間はTPP整備法によって定められており、原則として著作者の死後70年までです。
例えば小説家の芥川龍之介は1927年に亡くなっており、著作物である『羅生門』などの著作物については、すでに著作権が消滅しています。
企業の公式コンテンツにAI生成物を使う際のチェックポイント

では実際に企業がAI生成物を使用する場合、どういったことに注意すれば著作権侵害リスクなどの注意点をクリアできるのでしょうか。
ここでは、AI生成物を使う際のチェックポイントを5つご紹介します。
「生成元モデルの利用規約」を必ず確認する
「ChatGPT」や「Gemini」など、使用するAIモデルごとに利用規約が異なります。
ビジネス目的の利用を許可しないAIモデルも存在しており、企業の公式コンテンツで使用する際はこの点にも注意が必要です。
ビジネス利用がOKでも、例外的に特定の業界からの利用や一部の表現を認めないケースや、クレジット表記を必須とするケースも見られます。
事前に必ず利用規約を確認し、自社が使用できるAIモデルかどうかを見極めましょう。
権利クリアなAIモデル・素材を使う
ここまで述べてきたように、AI生成物に関するトラブルでもっとも怖いのが著作権・権利侵害。
AIモデル自体もそうですが、AI生成物の元となる学習素材も、権利関係のトラブルを排除できるものを使いましょう。
学習に使用したデータのすべてが著作権者から利用承諾を得たもの、著作権切れのもの、そもそも自由に利用できるものであれば、権利関係がクリアされており、生成物を安心して利用できます。
学習データに著作権者の許諾を得ていないコンテンツが含まれる場合、AIモデルの開発者だけでなく、その生成物を利用した企業にも訴訟リスクが生じます。
損害賠償請求を受けると多額の損失が発生するリスクが高まるほか、イメージダウンや社会的な信頼が失われる恐れもありますので、ぜひ注意したいポイントです。
特定のアーティスト風、特定キャラ風の表現は避ける
生成AIを利用する際、プロンプトに「〇〇風に表現してください」「〇〇のキャラクターのような画像を作成してください」などと打ち込まないようにしましょう。
AIモデルや学習データがクリアなものであっても、このような指示を出すと特定の著作物への依拠性が疑われやすくなり、著作権侵害のリスクが高まります。
プロンプトへの指示は普遍的かつ一般性が高いものに留めてください。
特定の人物やキャラクターを想起させる内容の表現は避け、オリジナリティのある表現を目指すべきです。
社内で「人間が制作に関与した証跡」を残す
ここまでは「自社が著作権侵害を行った場合のリスク」に重点を置いて解説しましたが、自社の公式コンテンツにAI生成物を使う際は、反対に「他社に著作権侵害されるリスク」にも警戒が必要です。
コンテンツのコピーを避けるために、人間が制作に関与した証跡を残しましょう。
著作権侵害を巡る裁判における判例では、「人間の創作意図や創作的寄与の有無」が重点的に確認される傾向が見られます。
つまり、AIが完全に自動生成したコンテンツではなく、人間が関与して制作されたコンテンツであるとの証跡が、自社の著作権保護に役立つのです。
具体的には、AIへの具体的な指示内容や意図を示すプロンプトの内容、生成された結果に対して人間が加えた修正・編集内容、その生成物を選んだ意図の記録です。
これらの証跡は、著作権トラブルに巻き込まれた際、生成物の著作権が自社にあるとの主張の裏付けに役立ちます。
似ていないか確認するリスクチェック体制を構築する
AIによって生成されたコンテンツが、既存の著作物や他社のブランドイメージと酷似していないか確認する体制を構築しましょう。
必要に応じて、社内で独自のAI生成物利用ガイドライン・ポリシーを策定し、全ての従業員と意識を共有する必要があります。
具体的なリスクチェックの方法としては、画像の場合は画像チェックツールを、文章の場合は類似性チェックツールや盗用チェックツールを利用すると便利です。
自社の既存コンテンツやブランドイメージに矛盾が生じる生成結果になっていないかを確認すると、より高品質なコンテンツを作成できますよ。
まとめ:生成AIは注意して利用すればビジネスの強い味方!

ここまでAIと著作権の関係性についてご紹介してきました。
注意点を把握したうえで活用する生成AIは、現在のビジネスにおける強い味方となります。
専門知識を要するイラスト・音声・動画・音楽などのクリエイティブ領域の制作を依頼する場合、一定の制作期間を見据える必要があったり、外注コストが発生するなど、施策効率化への課題は尽きないと思います。
そんな時にAI生成物を活用することで、外注費や制作スピードの大きな改善を見込めますし、市場の変化に素早く対応するためのプロモーションにも迅速に対応できるでしょう。
また、多様なバリエーションのコンテンツの大量生産も可能。
たとえばWEB広告のバナーパターンを大量に生成するなど、ABテストの効率化も期待できます。
とはいえ、まだまだAIに関する法整備も追いついていない現状。
「AIを使っている」ということによる企業ブランドのイメージ低下や、著作権侵害リスクはAI生成物活用について回ります。
利便性だけでなく注意点も理解し、「AIに使われる」のではなく「AIを利用する」側としてうまく取り入れていきたいところです。
「著作権周りのリスクが怖い」「企画〜制作まで一貫してプロにお願いしたい」とお考えの方はぜひジーアングルにお任せください。
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