こんにちは!幅広い制作領域を武器に「新たな感動を作る」制作会社ジーアングル ブログ編集部です。
YouTubeを流し見している最中、広告が流れてくる。
皆さんの指は無意識に「広告をスキップ」の位置にセットされているはずです。
ただ、もしその広告が「圧倒的な作画の暴力」と「今をときめく豪華声優のボイス」、そして「最高にシブいスカパラのサウンド」で構成された2分間の短編アニメだったらどうでしょう。
今回は、株式会社ネイチャーラボのメンズケアブランド「MARO17」が仕掛けたアニメCMについて、なぜこれほどまでに人々の心を揺さぶるのか、その理由を紐解きます。
ぜひ最後までご覧ください。
もはや「2分間の劇場版」。MARO17のアニメCMとは

「メンズケアブランドのCM」と聞いて、皆さんは何を思い浮かべますか?
爽やかなモデルが、均衡のとれた肉体を持つ俳優が、シャワーを浴びながら当該商品を手に取り、最後にロゴがバーンと出る──そんな王道の構成を想像するのではないでしょうか。
しかし、MARO17が提示したのは、その真逆を行く「本格派SFアクションアニメ」でした。
「泡沫(ウタカタ)feat.TETSU」編
「まだ諦めてないだろ」編
「どアタマからキメようぜ」編
2026年2月現在、本シリーズは全3部作が公開されており、その制作は『呪術廻戦』や『チェンソーマン』などで知られる日本屈指のアニメスタジオ・MAPPAが手掛けています。
圧倒的な映像美は世界でも高く評価され、第一弾がアジア最大級の広告祭「ADFEST 2024(アジア太平洋広告祭)」にてブロンズを受賞、「shots Awards Asia Pacific 2024」Animation(2D)部門でもBronzeを受賞しました。
YouTubeでの反響も凄まじく、第一弾は113万回、第二弾は70万回、第三弾は175万回を超える再生回数を記録。
(もちろん、再生回数自体は費用をかけて広告を回した結果という可能性もあります。)
しかし、単に有名スタジオを起用し広告費用をかければ同じ話題性を得られるかというと、そうではありません。
「MARO17」のアニメCMが話題になった4つの理由
なぜ商品のプロモーションCMが多くの人々を惹きつけたのか。注目すべき4つの要素を解説します。
映像・声・音楽、全部”本気(ガチ)”

本シリーズは、2011年の設立以来多くの人気作品の企画・制作を行い、アニメファンの信頼を獲得しているスタジオ・MAPPAが制作を担当しています。
MAPPAが手掛けたアニメ作品(一例)
- 呪術廻戦
- 進撃の巨人 THE LAST ATTACK
- チェンソーマン
- らんま1/2
- ベルサイユのばら
- 劇場版イナズマイレブン 新たなる英雄たちの序章
冒頭MAPPAのロゴを見たアニメファンなら、MARO17を知らなくても、この時点で「なんだろう?MAPPAの新しいアニメ?」という期待と共に見進めてくれる可能性が高いです。
(かくいう編集部でも、えっMAPPA!?豪華!!という声とともに、どれどれ…と見てみる流れが実際にありました。)
そして、映像も凄ければ声も豪華の一言です。
細谷佳正さん、宮野真守さん、木村良平さんというアニメファン・声優ファンなら誰もが知っている声優陣を贅沢に起用。
(全員好きな声優さんだった筆者は、耳に逃げ場がなくて椅子から転げ落ちました。)
- 八雲テツ:細谷佳正さん(「進撃の巨人」ライナー・ブラウン役など)
- 澁谷朔千夜:宮野真守さん(「DEATH NOTE」夜神月役など)
- 鳥居坂志門:木村良平さん(「ハイキュー!」木兎光太郎役など)
SNSで「神キャスティング」といった声も上がっているように、「今期の○○っていうアニメ、声優がめちゃくちゃ豪華」といった会話は日常的に行われており、どの声優が起用されているかはアニメのリッチさ(本気度)を判断する一つの指標となっています。
最後に、東京スカパラダイスオーケストラと、TK from 凛として時雨氏の起用、および本シリーズ3本それぞれに用意された書き下ろし楽曲がトドメとなり、いよいよもって劇場版アニメ(広告ではなく、エンタメ)の予告だと思われてもおかしくない条件がそろっているのです。
このように、「本気の新しいエンタメ」としての期待感を生み出したことが、成功への大きな要因になったといえます。
映像・声・音どれもがブランドとマッチしつつ、寄り過ぎていない

MAPPA、豪華声優陣、スカパラ&TK from 凛として時雨……どれもが「MARO17」という商品の世界観とマッチしつつも、「男性らしさ」といった性別に寄せすぎないエンタメであったことも重要なポイントです。
MAPPAには少年誌・青年誌を原作とする制作実績が多く、『あきらめない男のための、頭皮と髪、ボディのために新たな発想を加えて研究・開発されたメンズケアブランド』である「MARO17」とマッチ度が高いといえます。
とはいえのアニメ自体のファン層、声優・アーティストのファン層は必ずしも男性が圧倒的に多いというわけではありません。
SNSにおいて、声優・アーティストといった推し(好き)の関連情報や共感するコンテンツを拡散する傾向は女性に強く見られます。
本シリーズの内容が視聴者の性別を限定するものであった場合、YouTubeで9,000件を超えるコメントが寄せられるほどの話題化は見込めなかったはずです。
戦闘シーンに定評のあるアニメスタジオとのコラボで「男性がシャンプー(MARO17)を使う」シチュエーションを整えておきつつ、エンタメとしては性別問わず楽しむことができ、誰もが拡散できる土壌があったことも話題化の一因といえるでしょう。
商品のアピールを極限まで抑える潔さ

今回もっとも重要なポイントなのが、動画の9割以上が純粋なアニメーションパートで構成されていること。
商品のパッケージが登場するのは、全編のクライマックスを過ぎた最後の数秒のみです。
制作費をかけた分「もっと商品をアピールしたい」という誘惑は相当なものだったはずですが、そこをグッと堪えて、まずは徹底的に「エンターテインメントとしての楽しさ」を優先させています。
押し付けがましい宣伝色を排除し、エンタメとしての楽しさに振り切ることにより、「広告だと気づかず楽しみ、最後に驚き、結果としてブランドに好印象を抱く」という理想的な流れを生み出したのです。
ブランドの世界観そのものを表現した世界観

シャンプーの機能説明ではなく、ブランドが掲げる世界観の訴求が主軸だったことも成功の要因です。
「MARO17というブランドの世界観を届けて、ブランド自体のことを知ってもらう・ファンになってもらう」ことに振り切ったからこそ、エンタメ感を薄めず、結果として多くの視聴者の心を動かしたのです。
「何を売るか」の前に「どうあるか・どうなりたいか(世界観)」を定義し、それを一貫したクリエイティブで表現する重要性を表しているのではないでしょうか。
「ただの贅沢」で終わらせない。MARO17に学ぶこれからのプロモーション
「圧倒的なクオリティを叶える予算があったから成功した」
それもまた成功要因のひとつではありますが、MARO17のアニメCMにはこれからのプロモーションを成功させるための、予算に捉われないポイントが隠されています。
エンタメに振り切って、まず信頼を勝ち取る

今でこそSNSは広告配信の主戦場のひとつですが、本来は楽しさ、娯楽を求めて訪れる場所。
そこで商品を売りつけられても、指一本でスルーされてしまうのが現実です。
また、泡立ち、爽快感、香りや価格などシャンプー(商品)のプロモーションだけでは結局スペックの殴り合いになってしまい、アニメのクオリティで一時的に視聴者の記憶に残っても、すぐ忘れられてしまいます。
MARO17のアニメCMが徹底したのは、まずは視聴者を全力で楽しませるという「エンタメへの全振り」です。
商品の宣伝は最後のおまけ程度に留め、商品をアピールする前に「このブランドは面白いものを見せてくれる」という信頼を勝ち取ること。
この一貫した振り切りが、CM/広告を「スキップすべき邪魔者」から「歓迎されるコンテンツ」へと変えたのです。
本気の遊びがブランドへの好奇心を生む

本作は、プロモーションでありながら、視聴者が「劇場版アニメの予告かと思った」と錯覚するほどの熱量で作られています。
この、大人たちの「本気の遊び」を感じられるクオリティこそが、ブランドへの興味の入り口となります。
「エンタメとして面白いから、このブランドをもっと知りたくなる」という流れを作ることで、最後に広告だとわかったとしても、視聴者は嫌悪感どころか「これほどのアニメを広告で作ってしまうのか!」というポジティブな驚きを抱きます。
この心地よい裏切りが、単なる認知を超えたブランドへの好奇心を生み、ファン化の入り口を作ったといえます。
アルゴリズムを味方につけた、シリーズ化による相乗効果

本作が単発の企画に留まらず、全3本のシリーズとして展開された点も見逃せません。
もちろん1本だけでも大きな反響を呼んだはずですが、シリーズ化によって、SNSの特性である「関連コンテンツのレコメンド(おすすめ)」の恩恵も受けられる基盤ができています。
テレビCMによるマス広告は幅広い認知を獲得できる一方で、良い!と思ったものをすぐ共有するには過程が多すぎます。
一度どれかのエピソードを観たユーザーに対し、別の回が自然と表示される状態を作ることで、接触機会を増やし、興味や熱量を継続・拡大させていく。
ブランドを「点」ではなく「線」で記憶させる、SNSやWebでの拡散にも対応したシリーズ構成も、話題化のポイントです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
MARO17のアニメCMには、視聴者をいかに楽しませるかという一点に対する、徹底したこだわりが垣間見えます。
情報の伝え方が多様化する現代において、「ブランドの世界観をストーリー仕立てで描くことで、まず視聴者の感情を動かす」というアプローチは、一つの理想的なコミュニケーションの形と言えるのではないでしょうか。
日頃から音楽、映像やストーリー構築に携わる私たちジーアングルとしても、今回の事例には非常に大きな刺激を受けました。
「視聴者の欲しいものを徹底的に深掘り全力を注げば、広告はここまで高く評価され、自発的に広まっていく」という事実は、クリエイティブの世界に身を置く者として、背筋が伸びる思いです。
「自社のプロモーションでも、これまでにない挑戦がしたい」「視聴者の心に深く残るコンテンツを追求したい」
そんな想いをお持ちであれば、ぜひ私たちジーアングルにご相談ください。
