こんにちは!幅広い制作領域を武器に「新たな驚きと感動を作る」制作会社ジーアングルブログ編集部です。
バズる作品のコメント欄や、SNSの反響をチェックしていると、ある言葉が繰り返し目に入ります。
「エモい」
この言葉です。アニメのOP、アーティストのMV、何気ない写真──ジャンルも形式もバラバラなのに、大きな反響を集めた作品には、この一言が集まりやすい。
では、「エモい」とは一体何なのか。偶然と言うこともできますが、SNSを中心とした共通言語になっている以上、なにかしら再現性があるはずです。
今回は、便利な反面ちょっと言語化が難しい「エモい」という言葉を、徹底的に因数分解してみました。
構成要素から企業の発信への応用まで、独断と偏見も交えながら編集部なりに結論を導き出していきます。ぜひご覧ください。
- 「エモい」を構成する4つの要素
- バズるコンテンツに共通する、エモさの設計パターン
- エモさを意図的に作るための、具体的な組み立て方
- 企業コンテンツへの応用事例と、ビジネスで感情設計が効く理由
「エモい」とは?
「エモい」とは、若者世代を中心に浸透するスラングの一種です。
「感情的な」という意味を持つ英語「emotional(エモーショナル)」が語源とされ、「心が揺さぶられて、何ともいえない感情になること」を意味し、共感語や感想語として使われています。
「ヤバい」「尊い」と同じように、意味よりも”反応”を表す言葉です。
単純に「嬉しい」「悲しい」といった気持ちだけでなく、「懐かしい」「切ない」「寂しい」といった複雑な心情をひとことで包んでしまえる、便利な言葉といえます。
「エモい」は”感情”?”現象”?
「エモい」には、「感情的」「哀愁漂う」「ノスタルジック」といった、複数の言葉が内包されています。
つまり、単一感情に還元できない気持ちを一言で表現するときに使われる言葉です。
だからこそ、同じ作品でも「エモい」と感じる人と、そこまで感じない人に分かれる傾向にあります。
同じような使われ方をする「ヤバい」と比べると、その輪郭が少し見えてきます。
「ヤバい」は驚愕を表す場面で多用される一方、「エモい」が指すのは驚愕ではなく感嘆。
心が揺れたけれど、うまく言葉にならない。そのもどかしさを引き受ける言葉なのです。
「エモい」と「懐かしい」「レトロ」の違い
よく似た言葉に「懐かしい」と「レトロ」があります。
「懐かしい」は過去の具体的な記憶を呼び起こす個人的な感情で、「レトロ」は時代的なスタイルやデザインの古さを愛好する感覚です。
「エモい」はこれらを含みながら、もう一歩踏み込んでいます。
単なるノスタルジーではなく、切なさ・寂しさ・温かさが混ざり合った、何ともいえない感覚。
そのひと言では言い表せない複雑さを表現するときに、「エモい」が選ばれるのです。
「エモい」を構成する4つの要素
「エモい」は抽象的で包括的な言葉ですが、因数分解すると大きく4つの要素に行き着きます。それぞれを詳しく見ていきましょう。
「エモい」を構成する要素①視覚
エモさを伝えやすい要素の筆頭が、視覚です。
重要なのは「説明しすぎないこと」で、余白があることで見る側の補完が起きやすくなります。
クリアで高画質な写真よりも、「写ルンです」などのフィルムカメラで撮影した粗い写真が「エモい」と言われるのはそのためです。
粒子、ブレ、フィルムグレイン、モーションブラーなど、クリアすぎないことで「現実の手触り」「生活感」が際立ちます。
完璧に映すより、少し欠けているほうが感情を動かしやすいのです。
「エモい」を構成する要素②音
「エモい」という言葉はもともと、音楽の場から広がったとされています。
一時性・瞬間性が強いライブ会場で観客がパフォーマンスにエモさを見出したことが、現在の広い使われ方へとつながっていったと考えられます。
音は視覚よりも先に情動を動かしやすく、効くのは「音色」「空間」「不完全さ」「繰り返し」といった要素です。
テープヒス、環境音、アナログ感、わずかなピッチ揺れなど、完璧ではない=人間っぽい(体温がある)音が「エモい」とされる傾向にあります。
「エモい」を構成する要素③物語
エモい体験は「未回収」「途中」「行間」から生まれやすいです。
強いストーリー性を持たせすぎると、ユーザーに「正解」を押し付ける形になり、エモさが半減する傾向にあります。
ラストを断言しない、関係性を説明しない、結末を想像させる。
こういった余地を残すことで、見た人が自分の感情を投影しやすくなります。エモさとは、その「隙間」に宿るものなのです。
「エモい」を構成する要素④文脈
季節・時間帯・場所のテンプレートが「エモさ」の共通言語として機能します。
たとえば次のようなシーンは、エモさを生みやすい定番の文脈です。
- 夕方・夏・帰り道
- 駅・雨上がり・コンビニ前
これらを思い浮かべると、自分自身の記憶がオーバーラップする方も多いのではないでしょうか。
個人の記憶と共鳴することで、エモさはより増幅されます。
また、SNSの流通形式(縦動画・サムネ・短尺)も、より”刺さる瞬間”を尖らせ、共感を広げる要素となっています。
「エモい」がバズる理由とは?SNS時代の感想語としての役割
情報量だけを見れば、長文レビューのほうが詳しいですが、「エモい」の一言が長文レビューを超えて機能する場合があります。
あえて意味を説明しないことで受け手の解釈を尊重でき、共感が広がりやすいのです。
実際に大きな反響を集めた作品を、いくつかご紹介します。
エモさで人気になったイラスト例
ごく普通の女子高生と、年齢が近いモデルを描いた作品です。
モデルに憧れを抱く女子高生と、普通の女子高生に憧れるモデル。その対比が「エモい」と評価され、25万いいね(2026年3月時点)されています。
TVアニメ「葬送のフリーレン」に登場するフリーレンの横顔を、「テガミバチ」などの作品で知られる漫画家・浅田弘幸氏が再解釈して描いたイラストです。
これに対し、フリーレンの公式Xがアイゼンとハイターの文通シーンとともにお礼を投稿。
https://x.com/FRIEREN_PR/status/1853039716729589881
「テガミつながりの粋な演出がエモい」と話題になり、5.2万いいね(2026年3月時点)されました。
エモさで人気になった写真例
インプレッション3,000万件超・48万いいね(2026年2月時点)された、フォトグラファー・うちだしんのすけさんの作品です。
同じ人物・同じ背景で撮影された2枚の写真ですが、2年間の月日を経て女子高生から成人へと成長した姿の対比がエモさを生んでいます。
フォトグラファー・tomosakiさんがXに投稿した4枚の写真です。
「Time travel.」の一言を添えて投稿されたジブリのような幻想的な世界観が「幻想的」「エモい」と話題を集め、1.4万いいね(2026年2月時点)を獲得しています。
エモさで人気になった映像・MV例
YouTubeで7億回以上(2026年2月時点)再生されている、DAOKO×米津玄師「打上花火」のMVです。
夏の終わりのノスタルジーを感じさせるアニメーションと切ない歌詞が「エモい」と話題になりました。
TVアニメ「推しの子」OPとして採用された、YOASOBI「アイドル」のMVです。
YouTubeの再生回数は6.5億回以上(2026年2月時点)。真実と嘘、愛と嫉妬といった光と影を描いた映像がエモく、中毒性の高い作品としてバズりました。
「エモい」を設計するには?組み立て方
「エモい」は曖昧な言葉ですが、組み立て方の工夫によって意図的に設計できます。
4つのポイントから解説します。
①まず「狙う感情」を1語(切ない・浸る・青春など)に固定する
最初のステップは、「エモい」の中にある感情を1つに絞り、固定することです。
先述のとおり、言葉自体は「単一感情に還元できない気持ちを一言で表現するときに使われる」ものですが、どの感情を覚えるかは視聴者次第なのが「エモい」のミソ。
設計という視点では、「切ない」「懐かしい」「青春」といった複数の感情を全部盛りにすると説明しすぎになりかねず、制作の方向性もブレてしまいます。
感情を1語に固定してから、視覚・音・物語の選択を一貫させることが重要なポイントです。
②4要素のどれを”主役”にするか決める
視覚・音・物語・文脈の4要素は、どれを前面に出すかによって、コンテンツの刺さり方が変わります。
何を主役にするかを決めるうえで参考になるのが、「そのコンテンツがどんな状況で受け取られるか」という視点です。
たとえば、SNSのフィードをスクロールしている状態では、音声がオフのまま流れてくることも多く、視覚が最初の入口になります。
一方、能動的に再生されるMVや短編映像では、音と物語を組み合わせることで感情により深く作用します。
テキストや静止画コンテンツでは、文脈の設計(季節・時間帯・場所といった共通言語)が共感の起点になりやすいです。
| 受け取られる状況 | 刺さりやすい主役要素 |
|---|---|
| SNSフィードで受動的に流れてくる | 視覚(瞬間的に目を引く) |
| 能動的に再生される映像・MV | 音+物語(深く、繰り返し見られる) |
| テキスト・静止画コンテンツ | 文脈(記憶との共鳴を起こす) |
| ライブ・イベント・体験型 | 音+文脈(一時性・場の空気感) |
重要なのは、4要素を全部盛りにしないことです。
主役を絞ることでコンテンツ全体の設計に一貫性が生まれ、転じて語らない部分も明確になり、エモさが際立ちやすくなります。
③情報量を調整して「余白」を作る
何を見せないか、何を言わないか、どこで切るか。
説明しすぎないこと、つまり余白を作ることが、実はエモさの再現において一番重要な点であると考えます。
人間の脳には補完機能があります。視覚・聴覚など与えられた情報に不足している部分を、勝手に想像して補う機能です。
「エモさ」に関しては、この補完機能がかなり強力に働いているのです。
懐かしさと近い文脈で語られることの多い「エモさ」ですが、これも脳が情報を処理する際、個人の学生時代の記憶・経験などを引っぱってイメージ作成を補うから。
切なさでも、懐かしさでも構いません。“視聴者の補完”が起きるポイントを意図的に残すと、エモさが引き出されやすくなります。
「エモい」の具体的な表現例
先述したように、エモい投稿を行える媒体は4つに分けられます。
それぞれの媒体を用いた、具体的なエモさの表現例を見てみましょう。
映像・MV
音の余韻に合わせて編集テンポを設計します。
リバーブ(残響)が長い箇所ではカットを長く保ち、音が切れる瞬間に映像を切り替えるとよいでしょう。
サビなどのループ箇所を象徴的な瞬間に固定すると、中毒性が生まれます。
写真・ビジュアル
ノイズ・質感・曖昧さを”劣化”ではなく”情緒のレイヤー”として扱います。
輪郭を少し曖昧にするだけで、「記録としての写真」から「記憶の中の写真」へと変わる──そのわずかな処理が、エモさを引き出します。
音楽
環境音・空間・不完全さで情景を立ち上げることが重要です。
物理的な音色だけでなく、その音が鳴っている空間そのものを提示しましょう。
あえて生活音を忍ばせると、聞き手のパーソナルな空間に楽曲が浸透していきます。
文章・コピー
断言を避け、行間を作ることがポイントです。
「彼はとても悲しかった」ではなく、「彼は冷めかけたコーヒーを持ち、ゆっくりと空を見上げた」といった”彼”の行動を客観的に描写する等。
説明文ではなく、断片・比喩・余韻で補完させると、行間にエモさが宿ります。
企業コンテンツでも「エモい」は使えるのか
「エモい」という言葉から、アニメのOP映像やアーティストのMVといったエンタメコンテンツを連想する方は多いのではないでしょうか。
しかし、エモさはエンタメ専用の演出技法ではありません。企業が発信するコンテンツにも、同じ原理は確実に機能します。
時代を超えて機能するエモさ——JR東海「X’mas Express」シリーズ
1988年から放映されたJR東海のテレビCM「X’mas Express」シリーズは、企業コンテンツにおけるエモさの原点ともいえる作品です。
セリフはほとんどなく、駅のホームで待つ人、走ってくる人、そして再会の瞬間。それだけで物語が完結します。
商品の説明も、サービスの訴求も最小限。にもかかわらず、30年以上が経った今もYouTubeで繰り返し視聴され、「また見てしまった」「泣いた」というコメントが新たに積み重なっています。
「説明しない」「行間で語る」「余白に感情を委ねる」。
この記事で解説してきたエモさの設計原則が、1980年代の企業CMにすでに体現されていたことは、示唆に富んでいます。
当時「エモい」という言葉は存在しませんでしたが、表現の本質は変わっていないのです。
現代の企業コンテンツでも——サントリー「伊右衛門の車窓にて」シリーズ
2020年代に入り、「エモい」という言葉が完全に定着した時代に登場したのが、サントリー「伊右衛門」のアニメーションCMシリーズ「車窓にて」です。
電車の車窓、登場人物たちの何気ない日常、語られない関係性。X’mas Expressと共通するのは、やはり「説明しない設計」です。
SNSでは映像へのコメントのほか、キャラクターへの二次創作が自発的に広がり、ブランドの世界観がユーザー側に能動的に引き継がれていく現象が起きました。
長い年月を経ても、感情に訴えかける表現の構造は変わっていない。この2つの事例は、エモさの普遍性を企業コンテンツの側から証明しています。
採用・周年・ブランディングへの応用
エモさの設計は、特定のジャンルに限った話ではありません。
企業が日常的に制作・発信するコンテンツの中にも、感情設計が有効に機能する場面は多くあります。
たとえば採用動画。スペックや条件の羅列より、社員の表情・職場の空気・入社前後の変化を「見せる」構成のほうが、見た人の記憶に残りやすく、応募動機に直結するケースがあります。
周年記念コンテンツも同様で、数字で歴史を語るより、創業当時の情景や関わってきた人々の断片を積み重ねたほうが、社内外に対してブランドへの共感を生みやすい傾向にあります。
CSRや企業ブランディングの文脈でも、「余白のある物語」は機能します。
形式は問いません。動画・イラスト・音楽・コピー、どの媒体であっても、4つの要素(視覚・音・物語・文脈)を意識した設計は、企業コンテンツにも応用できるのです。
なぜ「エモい」がビジネスにも効くのか——エモーショナルマーケティングという視点
企業コンテンツへの応用事例を見てきましたが、そもそもなぜ感情に訴えかける表現がビジネスにおいても有効なのでしょうか。
ここでは「エモーショナルマーケティング」という視点から、その背景を整理します。
感情は記憶と行動に直結する
人は感情を動かされたとき、その体験を記憶に残しやすくなります。
マーケティングの文脈でいえば、ブランドや商品への「感情的なつながり」が形成されると、認知から検討・購買へのプロセスがスムーズになる傾向にあります。
情報が溢れる現代において、スペックや価格だけで差別化することは難しくなっています。
同程度の品質・価格帯の選択肢が並んだとき、最後の一押しになるのは「なんとなく好き」「あの会社らしい」といった感情的な印象です。
エモーショナルマーケティングとは、その感情的なつながりを意図的に設計するアプローチといえます。
「エモい」はエモーショナルマーケティングの現代語
エモーショナルマーケティングという概念自体は以前から存在しますが、「エモい」という言葉の浸透は、SNS時代における「感情訴求の重要性」をあらためて可視化しました。
JR東海「X’mas Express」が1980年代に体現していた設計原則と、現代のバズるコンテンツに共通する構造は、本質的に変わっていません。
変わったのは、その感情的な反応が「エモい」という言葉でリアルタイムに可視化・拡散されるようになった点です。
コメント欄やリポストを通じて共感が広がるSNS時代において、エモさの設計はより直接的にビジネス成果に結びつきやすくなっています。
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まとめ
「エモい」を因数分解すると、視覚・音・物語・文脈の4つの要素に行き着きます。
抽象的に見えるこの言葉も、構成要素を理解し、狙う感情を絞り、余白を意図的に作ることで、設計できるものだというのが編集部の結論です。
「エモい」はスラングとして生まれた言葉ですが、その裏にある原理は時代やジャンル、企業の発信においても変わらず有効である、普遍的な表現の本質です。
エモさは偶然ではなく、設計できる。
その視点が、ひとつでもみなさんのコンテンツ制作のヒントになれば幸いです。



